放送⼤学は2023(令和5)年に創⽴40周年を迎えました。創⽴40周年記念事業の⼀環として、放送⼤学の運営や放送事業等において活躍されてきた⽅々の⽣の証⾔をインタビュー動画の形で保存し、貴重な証⾔として記録しています。このうち⼀部をご紹介します。
吉川 弘之
大学院の設置
放送⼤学は教養学部のみの⼤学だったので、教養課程の⼤学院を設置することについては、様々なご意⾒がありました。当時の⽇本の⼤学では教養課程を学部で修めてから、⼤学院で専⾨課程を履修するカリキュラムが⼀般的でした。しかし、先端的な専⾨分野の研究を深めるほど、専⾨分野間をつなぐための対話の⾔葉としての教養が⾮常に重要になる。こうした思いから教養課程の⼤学院を設置しようとしたのです。
御⼿洗 康
学習センターの整備
(放送⼤学は1998年(平成10)、CSデジタル放送による全国放送を開始し、また全ての都道府県へ学習センターを設置した。) 放送⼤学が全国に放送教育を届けることができるようになり、当初は群⾺、埼⽟、千葉、東京第⼀、東京第⼆、神奈川の6箇所だった学習センターも全ての都道府県に設置しました。それに伴い学⽣数も増加しています。
学習センターでは地元の国⽴⼤学を退官された先⽣⽅に所⻑になっていただき、学習センターの在り⽅について様々なご意⾒をいただきました。学⽣からも様々なニーズが寄せられ、それを汲んで学習センターの整備を進めました。
東日本大震災への対応
(2011(平成23)年、東日本大震災により、放送大学も本部と東北地区・関東地区の学習センターに被害がありました。)
一番に取り組んだのは、被災地の学習センターへ依頼して、学生の状況を把握することです。それから、幸いなことに本部の放送設備が無事でしたので、放送を止めてはいけないと思い、計画停電下における電源について、担当者と共に真剣に考え、手配をして参りました。
岡部 洋一
博士課程の指導について
博士課程の指導における一番のポイントは、複数の先生が集まって指導するということです。一人一人の先生の研究分野は細分化されており、大学院生が目指す分野と必ずしも重なり合っているとは限らない。大きな大学であれば、比較的近い分野の先生が指導教官として見つかるけれど、放送大学では研究分野が異なっていても指導を行う必要があるわけです。その際一人の先生で指導を行うのは難しく、何人かでまとまったチームを作って指導する必要があるだろうという議論を最初に行いました。
白井 克彦
インターネットを利用した
授業の導入
インターネットを使ったe-ラーニングが実用的になり、世の中で広く使われるようになってきました。放送大学がこれまで教育に活用してきた電波という媒体は素晴らしいけれども、一つのチャンネルで同時に複数の授業を扱うことはできないわけで、そうした点においてインターネットのメリットは非常に大きいわけです。ですので我々もインターネットの上で教育を展開していく必要があるのではないかという思いを(当時在任していた岡部学長と)同じくしていました。
有川 節夫
地上波放送の終了
地上波による放送を終了して衛星放送だけにするということになりました。その際、衛星放送では二つのチャンネルを使うことができたので、片方で授業番組、すなわち放送大学の正規の単位を取る番組を流すことにし、もう一報を一般向け広報も含めた生涯学習支援番組を流すことにしたのです。
放送大学の建物の屋上には大きな電波塔とアンテナが設置されており、放送大学のシンボルになっていたのですが、地上波による放送局の役割が終了したということで、これらの設備についても撤去されました。
來生 新
コロナ下での大学運営
コロナ下での授業について、最初に苦労したのは学習センターごとに実施している面接授業でした。コロナ禍が拡大していく中で、ある時点で全面的に面接授業をやめるという決断が必要だった。けれど卒業要件を満たさなければならず、放送にはない(しかし面接授業に求められる)双方向性を確保できるのはオンライン授業であるということで、先生方がオンライン授業で面接授業の代替となる授業をしてくださった。これはオンライン授業というものが可能になっていてよかったと思うことの一つです。
(面接授業からオンライン授業への以降に伴う課題として)昔からコンピュータの扱いを苦手とする学生に対する教育は進めていたけれども、卒業要件に関わることであるから対応が必要であると考え、放送を使ったオンライン授業という非常に内容の密度の高いコンテンツを作っていただきました。
岩永 雅也
放送大学での新しい学び
放送大学は自らの教養を高め、学びを得て教養ある人間になるためにという目的で入る方が多いと今までは考えており、実際にそういう方が多くいらっしゃったのですが、実際には自分の仕事をする上で資格を取得するための勉強がしたい、あるいは必要な分野を集中的に学びたいという方もたくさんいるという状況に気がつきました。
今何が求められているか、どのような学びが期待されているかということを、常にアンテナを高くして感知しながら、それに応じた放送大学らしい教育を更に進めていくことを考えており、将来的にはかなり発展性があるのではないかと思っています。
佐々木 正實
放送教育開発センター教授
在任期間
1994-1997
放送教育開発センターでの
教育放送番組の研究
放送大学が設立された昭和58 (1983)年に放送教育開発センターにはスタジオが作られました。そして翌59 (1984)年の秋から60(1985)年4月の学生受け入れに向けて、急ピッチで1年次分の授業番組の制作を行いました。
(テレビに出演するということについて)普通の人である大学の先生が、いかにして自分の持っているプレゼンテーション能力を発揮できるか、そうした工夫をディレクターの立場としてできないかと考えました。